ネットでバルトークの本を探しても、書名に「バルトーク」が入らない本はなかなか見つからないかもしれません。ここでは私の本棚からそうした文献を紹介します。熱心に集めたわけではないので、全体のごく一部でしょう。
もし一般書店や古書店で手に入らなければ、公立・大学図書館の利用をお勧めします。その図書館に所蔵していなくても、所蔵する図書館から書籍自体を借りたり部分的にコピーを取り寄せるサービスがあります。下のデータをメモして、身近な図書館で相談してみましょう。
発行年代順。種々雑多な内容ですが、あえて分類等は控えます。
太田黒元雄『西洋音楽物語』1932、第一書房
「192 バルトック」pp.314-315.
(内容)人と音楽を簡単に紹介。バルトークと同時代。
湯淺永年『西洋作曲家批判』1942、樂音興新社
「バルトックの民族音楽」pp.349-361.
「バルトックの自作自演を聴く」pp.362-367.
(内容)同時代の批評。前者は、バルトークを日本に招き、日本や中国の音楽を研究してほしいと好意的。後者は1928年2月にニューヨークで聴いた、バルトークの自作自演の追想。「眼ばかり丸く極めて小柄で優しく見えたが、実際はこの小さい方の人が巨人であり、恐ろしい威力を発揮した」と結ぶ。
太田黒元雄『作曲家大観』1950、音樂之友社
「バルトオク(ベラ)」pp.368-371.
(内容)生誕から死去までを年次ごとに箇条書きで紹介。
塚谷晃弘『現代の音樂』1952、宝文館
「ベラ・バルトークの素描」p.106-112.
(内容)生涯と作品の概要。
カール・ヴェルナー(Karl H. Wörner)/入野義郎訳『現代の音楽』1955、音楽之友社
「バルトーク」pp.175-181.
アンドレ・オデール(Andre Hodeir)/吉田秀和訳『現代音楽』1956年、文庫クセジュ(白水社)
「第5章 ベラ・バルトーク」pp.77-89.
(内容)バルトークの経歴・人間、交響的音楽と室内楽、バルトークの芸術の特徴
乾 孝(責任編集)『新しい世界の伝記8 世界の文化をすすめた人々』1965年、学研
鈴木三枝子(文)・谷 俊彦(絵)「バルトーク」pp.109-154.
(内容)日本での成功、ブダペスト音楽院へ、音楽家いがいになりたくない! 母国語を、だいじにしよう、はじめてのオーケストラ曲、コンクール落選、20世紀の新しい音楽、戦争をさけて音楽を、人びとをゆたかにする愛国心、ナチスの疫病、アメリカ亡命
戸田邦雄『音楽と民族性』1967、音楽之友社
「バルトークならびに「二十世紀民族主義」とその影響」pp.211-217.
五味康祐『西方の音』1969年、新潮社
「バルトーク」pp.43-52.
(内容)エッセイ。弦楽四重奏やピアノ曲に言及。
野呂信次郎『名曲物語』1969、現代教養文庫(社会思想社)
「バルトーク ピアノ協奏曲 第三番」pp.321-323.
小倉朗『現代音楽を語る』1970、岩波新書
「V. バルトーク」pp.167-212.
林光『林光音楽の本』1971、晶文社
「バルトーク—子どものための伝記」pp.62-84.
(内容)平易な語り口によるバルトークの小伝記。
吉田秀和『一枚のレコード』1972、中央公論社
「《This is my work》」pp.14-23.
(内容)1953〜54年に、著者が若きペーテル(ピーター)・バルトークと会った時のエピソード。バルトーク・レコーズのLPレコードの感想等。
吉田秀和『主題と変奏』1977、中公文庫
「VI ベーラ・バルトーク」pp.102-114.(初出『芸術新潮』1952)
柴田南雄『名演奏のディスコロジー 曲がりかどの音楽家』1978、音楽之友社
「ブーレーズのバルトーク/三つの舞台作品」pp.31-40.
(内容)3つの舞台作品についての詳細な解説。ペーテルの録音についても言及。
塚本邦雄『断言微笑 クロスオーバー評論集』1978、読売選書(読売新聞社)
「支那とスフィンクス 寺山修司『中国の不思議な役人』に寄せて」pp.57-62.(初出『劇場』16号)
(内容)寺山修司の翻案に関する評論。バルトーク、レンジェル、バラージュ、青ひげ公の城等にも言及。
岡俊雄『マイクログルーブからデジタルへ(上)』1981年、ラジオ技術社
「第15章 バルトーク協会とピリオド〜活躍したマイナー・レーベル(2)」
諸井誠『音楽の創造と再生 レコード音楽文化論』1985、音楽之友社
「愛と死の変容 バーンスタインの〈トリスタン〉とアッバードの〈中国の不思議な役人〉」pp.146〜155.
「象徴主義のオペラ、二つの〈青髭〉 デュカとバルトーク」pp.156〜168.
「二十世紀のヴァイオリン協奏曲」pp.169〜182.
諸井誠『音楽の現代史 —世紀末から戦後へ—』1986、岩波新書
「II バレエ音楽に前衛性を探る —ストラヴィンスキーとバルトーク—」pp.43-72.
浦岸英雄『わたしの変奏曲』1994、高槻自治センター
「神なきバッハ バルトークの生涯と音楽」pp.65〜130.
市村弘正『小さなものの諸形態 精神史覚え書』1994、筑摩書房
「文化崩壊の経験—晩年のバルトークについての脚註」pp.37〜68.(初出『省察』1989年3月)
五島雄一郎『死因を辿る —大作曲家たちの精神病理のカルテ』1995、講談社+α文庫
「厚い壁で守った"自我" —バルトーク」pp.297-303.
今井信子『憧れ—ヴィオラとともに』2007年、春秋社
「バルトークのヴィオラ協奏曲」「バルトークの息子に会いに行く」pp.188-194.
(内容)《ヴィオラ協奏曲》の新旧版をめぐる問題を解決するため、2003年にペーテル宅を訪問した報告。
エピソード
書籍『父・バルトーク』の「訳者あとがき」で、ペーテルが私(村上)を彼の自宅を訪問した「最初の日本人」と語ったと書きましたが、この本から今井さんが3年早く訪れていたことを知りました。ペーテルは彼女が日本人なのを忘れていたのかもしれません(笑)
平井直哉『クラシック名曲初演&初録音事典』2008、大和書房
「バルトーク、ベーラ」pp.153-166.
(内容)バルトークは18曲記載。このうち《舞踊組曲》《かかし王子(全曲)》《中国の不思議な役人(組曲)》《ヴィオラ協奏曲》《弦楽四重奏曲第3番》《青ひげ公の城》がバルトーク・レコーズにより世界初録音。《管弦楽のための協奏曲》初演時のクーセヴィツキーとバルトークとの逸話が詳細で興味深い。
ヤーノシュ・シュタルケル/石戸谷滋訳/堤剛監修『ヤーノシュ・シュタルケル自伝』2008、愛育社
「6. アメリカ合衆国:ダラスとニューヨーク」pp.127-158.
(内容)回想記の中にペーテルとのレコーディング時の様子が報告されている。
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